【不許可事例】知られざる月末1日の取り扱いについて
知られざる月末1日の存在
日本人の配偶者等の在留資格で在留する外国人とその日本人配偶者から、永住許可申請の依頼がありました。
夫婦の年収要件(日本人配偶者は正社員、申請外国人はパート従業員)、住民税の納税および年金の納付について夫婦ともに滞納なし、預貯金は微妙でしたが、やはり日本人配偶者ということもあって、問題なしと判断し依頼を受けました。
この要件で不許可になるはずもないと、自信をもって申請取次をしたのですが・・・
申請3か月後に入管から資料の追加提出を求められました。
それは、日本人配偶者の被保険者記録照会回答票と被保険者記録照会納付Ⅰ納付Ⅱです。
日本人配偶者の年金納付記録については「ねんきんネット」による各月の年金記録を添付していたはずだったのですが、なぜか追加で求められました。
すぐに年金事務所に電話連絡をし、被保険者記録照会回答票と被保険者記録照会納付Ⅰ納付Ⅱを日本人配偶者へ郵送するよう依頼。
日本人配偶者へは、それが届いたあと当事務所に郵送するよう依頼しました。
そしてそれが当事務所に届きました。
即、開封し内容を確認したところ、ひと月分だけ納付遅れが記録されていました。
すぐに日本人配偶者に電話連絡をし、事情を聞きました。
日本人配偶者は、申請外国人が永住許可申請をした1か月後に転職をしたようです。
その事実は知らされていませんでした。
その転職は、とある月の末日に退職をし、翌月1日から新たな職場での就業を開始したというものでした。
しかし、年金の記録には、その退職をした月に納付遅れが記録されているから、この時点で「もしかすると」という予測がありました。
でも、もう少し詳しく話を聞きました。
私:「退職した日は月末でしたか?それともその1日前でしたか?」
納付遅れが記録されている月は、その月の日数が31日ある月でした。
配:「30日です。」
これで事情が分かりました。しかし、知らないふりをしてもう少し聞いてみました。
私:「今年、年金を納付書によって納付したことはありますか?」
配:「あります。」
私:「それはいつですか?」
配:「つい最近です。」
これですべて理解しました。
厚生年金等の社会保険料納付のからくり
厚生年金を含む社会保険料等は、給料から天引きされて会社経由で納付されるものですが、会社から納付されるのは、その月の月末に在籍していた場合です。
例えば、月の日数が31日ある月の1日前である30日に退職する場合、社会保険資格の喪失日は月末の31日となります。
社会保険料というのは、控除する月の前月分を給与から差し引いて支払うのですが、上記のケースの場合、退職の月と資格喪失の月が同月になるので、社会保険料の支払いは前月までとなります。
つまり、退職した月の社会保険料は会社経由で支払われていないのです。
それを知らないまま退職してしまった日本人配偶者は、市町村からの納付書が届くまで、納付する機会を得られませんでした。
そして、市町村から納付書が届き、どの程度の時間が経ってから納付したのかわかりませんが、事実、これが入管によって納付遅れと認定され、永住許可申請が不許可となったのです。
非常に難しい問題です。
しかし、気づきました。
日本人の配偶者等で在留する外国人は、年数要件が緩和されていることなどから、なにかと永住許可申請が許可されやすい傾向になるのではと思うのですが、実際は全くそのようなことはありません。
申請外国人の素行が良くとも、配偶者である日本人の要件が満たさないようであれば、たとえ上記のような月末1日前での退職によって年金の納付がされなかった、または、遅れたことによって、入管は、無情にも永住許可申請を不許可にするのです。
入管の行政相談を受け、申請者とその配偶者に、不許可の事実とその理由を伝えました。加えて、次の永住許可申請をするタイミングは、今回納付遅れがあった月の2年後になることも伝えました。
おそらく、日本人配偶者自身の不甲斐なさというよりは、社会の仕組みを理解していないことにより、未だになぜ不許可になったのかが最後まで分からない様子でした。
もしかすると、私の申請方法が原因で不許可になったのだと勘違いしていたのかもしれません。
結局、2年後に申請するのかどうか、その時にこちらに依頼するのかどうかもわかりませんが・・・
なんとも後味悪い感じでこの案件を終えたのであります。